霧矢あおいの日々シネマ

女優・霧矢あおいの映画ライフ

エベレスト3D

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「エベレスト3D」は2015年公開のノンフィクション・パニック映画


ミケランジェロや貞子、実在するものもしないものもとりあえず3Dにしていた時期よりは少し遅れて公開された印象ね。


原題は「Everest」だけど、日本では例によって3Dが付け加えられているわ。



パニック映画でノンフィクション。

人を襲うのはひたすら自然の猛威よ。


見ていると、正直山の恐ろしさというよりは人間の愚かさのほうが目につくわ。


酸素を吸わずに登り切ることをポリシーに掲げる派閥と、それに突っかかる派閥あり。断崖絶壁の地での大喧嘩は別の意味でハラハラした。


なぜ人は山に登りたがるのか。という問いの答えは、「そこに山があるから」だけではなく、案外お金と名誉が絡んでいることがわかったり、登山の意外なリアルが興味深い。



空撮を駆使したエベレストの映像や、高いところから見下ろす険しい大地は圧巻だけど、最後までそれ以上のハラハラドキドキはあまりなかったかな。


背負っている酸素がなくなりそうになるシーンは正統派パニック映画っぽいけど、宇宙モノで死ぬほど観た…。



それよりも、この映画のキーワードはお金かも。


「お金って命綱なんだ。」ってこと、リアルに再確認できたわね。


500日のサマー

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500日のサマーは2009年のアメリカ映画。監督はマーク・ウェブ。

 

ミュージックビデオで有名な監督の長編映画デビュー作。

ノリの良い音楽とライトで誰にでも入り込みやすい恋愛が多くの人を惹きつけたヒット作。日本での人気もとても高いわ。

映画の最初にあるように、ロマンティックな恋の偶然を探す男女が出会うボーイミーツガールのお話だけど、これはロマンティックな恋のお話ではなく、「恋愛観」のお話。

最初の仕掛けは、サマーとトムの出会いが、ロマンティックなものだと見せかけて、実はトムがサマーを気にするようになったのが白いシャツからチラリと覗く胸元が最初なこと。

なんだけど、本当にさりげないカメラワークだから女性だと気がつかないかもしれないわ。


そう、この映画の最大の仕掛けは、男女の感想が全然違うこと!

ぜひステディと一緒に見てほしい。

 

互いの思う「ロマンティックな恋」通りにいかないと摩擦が起きる男女あるあるが延々繰り広げられてもやもやするわ。


傷ついてもすぐに仲直りのキスで元通り。の繰り返し。

そして、
「もしかしてこれは相手のことが好きなのではなくて、恋をしている時のキラキラした気持ちが忘れられないだけなのでは。」

と気づいても、恋愛は一度はまると抜けられない中毒のようなもの。

性格きつめのサマーとのすったもんだでズタズタになったトムの傷は次の恋でしか癒えず。


サマーの後に好きになる女の子へのアプローチはナンパというトムの結論が、清々しい。

 

家族ゲーム

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家族ゲーム」は1983年に公開された松田優作主演の映画。
監督、脚本は森田芳光

原作は1981年に出版された同名小説で、この映画の前にテレビドラマも作られ、映画の後も2回リメイクされているわ。

次男の受験勉強でピリピリした空気漂う沼田家に松田優作演じる大学7年生の家庭教師が訪ねてくるストーリー。

題材の1つとして挙げられる、神奈川県の少年金属バット両親殺人事件。劇中に2回「バット殺人」という言葉が登場して、当時この事件がセンセーショナルだった事、事件後の親は子供の暴走に怯え、子供はお受験ブームに疲れていた背景が見えてくる。

家族ゲーム」というタイトルは、当時大ブームだったファミコンを想起させるもの。
映画のシニカルさとコミカルさも伝わる良いタイトルよね。


主人公が憧れる大阪万博のジェットコースターやチョイ役のアイドルなど、俯瞰して描かれる時代感に独特の味があるわ。


もっとも注目すべきは家族の描写。

家族の実在感を浮き立たせるのに、「その家族独特のルール」を作ることはポピュラーな方法。これに加えて舞台装置としての役割も発揮した、スライド式お惣菜テーブルは森田監督ピカイチの発明。

 

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さらに、松田優作が加わると、なぜか最後の晩餐の構図に。

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有名な長回しの最後の夕食シーンの後の、様々な解釈がなされるラストシーン、わたしはシンプルに時代の総括ではないかと思う。

背景に度々出てくる大規模な開発工事が行われる港からもわかるように、建設と破壊の時代であること。そして、それが発する音の不安感。

ラストシーンのヘリコプターの破壊音のような響きは、どこまでも平坦な「ホームドラマ」の終わりを暗示しているんじゃないかな。

 

 

 

 

 

AKIRA

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大友克洋原作の漫画「AKIRA」の劇場版。

 

1982年、世界大戦で新型爆弾「AKIRA」が炸裂したことにより東京は崩壊し、新首都「ネオ東京」を東京湾上に再建した。

 

2019年、ネオ東京は2020年にオリンピックを控えるもの、財政難による政府への反発からクーデターやテロが相次ぐ殺伐とした都市になっていた。

 

そんな街で暮らす暴走族リーダー格の少年・金田は、仲間たちとクーデターのどさくさに紛れ、いつものように禁止区域である、旧都市街を疾走していたが、先の大戦の爆心地付近で白髪の少年に遭遇し、不思議な力を目の当たりにする。

 

勢いあまって少年と衝突しそうになった、仲間の鉄雄に少年は手を触れずに重傷を負わせ、消えていった。

 

不思議な力に触れたため、自らも超能力に目覚めかけた鉄雄は、ラボに入院させられ、能力を増強させるための薬物を投与され、やがて制御できないほどの凶暴な力を得る。

 

力を得てから、悪夢でアキラの声を聞くようになった鉄雄は、アキラに興味を示し、重要国家機密である「AKIRA」と夢に現れる少年・アキラの謎を暴こうとする。

 

 

2020年のオリンピックまでに絶対に見ておきたい映画の1位は間違いなくコレ!

 

厳密には2019年くらいまでには見ておきたい映画だから、まさに観るなら今でしょう!!

 

原作者自らが監督・脚本を手掛けているという稀有な作品よ。

私は劇場版を見てから漫画を読んだけど、ストーリーが少しずつ違っていて、どちらが先でも楽しめると思うわ。

 

世紀末モノだけに、暴力の描写が多いから苦手な人は気を付けて!

 

ここまで書くとわりとアクの強い作品だけど、アニメ映画のクオリティとしてはとにかく最強!

 

動画としての作りこみが別格すぎて、アニメであることを疑いたくなるレベル。しかもすべてセル画だというから驚きだわ。

 

まず見てもらいたいのが人物の口の動き。「あいうえお」の口の動きをセリフに合わせて描き分けてるから、本当に喋っているみたい!

 

 

ほかには、人が逃げ惑うシーンで何百という人が別々の動きをするのも圧巻。

 

製作費がアニメとしては脅威とと言える10億円だというのも納得。手描きということをとっても、おそらくもう作ることのできない贅沢なアニメ映画ね。

 

 

 

世界大戦に大量殺戮兵器と、規模の大きな作品に見えるけど、描かれるのは東京の一部だけ。

 

 にもかかわらず、首都が崩壊していると世界が終わるように見えるのは日本独特の感覚かもしれないわね。

 

邦画洋画問わず、世紀末モノで「一方ブルックリンは・・・」的な描き方はよく見られるもの。だけど、なぜか日本の映画だとリアリティや危機感を逆に損なうことが多いように思うのは、

 

もしかしたら、日本という国が、問題が起きると外部の情報が入って来づらくなるということを私たちは実はよく知っているからかもしれない。

 

 

問題が内部で泥沼化して行くのをただ見ているだけの絶望感。

 

震災後に見るとそういったことが、より鮮明にリアルに感じられて、当時の歯痒さを思い出してしまったり。

 

 

 

AKIRAはSF作品だけれど、現在進行形の日本の「ヤバイ」ものがてんこ盛り。

 

そして、そのヤバさが製作当時から脈々と受け継がれ、2020年の東京オリンピックまで現実のものとなったりしているのがなによりヤバイ

 

今も東京オリンピックは問題だらけだし、オリンピックに向けてだんだん貧しくなっているところは世の中にたくさんある。

 

にもかかわらず、映画を観てから、以前よりオリンピックが楽しみな私もいるから不思議。

 

アキラの爆発は奇しくも美しい日の丸を描き、都市の再生を思わせるエンディングには憧憬を抱く。

 

 

「皆、ぶっ壊してくれるなら誰でも良かったんだ。」

 

という鉄雄の言葉は、破壊は私たち一人一人の内側から始まっているということを自覚させるわ。

 

 

勝手にしやがれ

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ジャン・リュック・ゴダール監督、フランソワ・トリュフォー原案のフランス映画。

 

モノクロの作品で、初期のヌーベルバーグを代表する作品よ。

 

ボギーに憧れるけどどこか情けないフランス人の青年・ミシェルと、奔放なアメリカ人の女の子・パトリシアの恋のお話。

 

盗んだ車を転売してその日暮らしの生活をしているミシェルは、マルセイユで盗難車を運転しているところを追いかけてきた警官を射殺してしまう。

ミシェルはひとまずパリへ逃亡し、貸しになっていた金を得ようとするが、現金で受け取るにはベリユッティという男に会わねばならないことになる。

ベリユッティを探しつつ、南仏で恋に落ちたパトリシアに会い、一緒にイタリアへ逃げようと持ち掛ける。

パトリシアはミシェルに殺人の容疑をかけられていることを知っても、彼と気ままにデートを重ね、逃亡にも乗り気でついてくる。しかし、途中で心変わりをしたパトリシアは彼の居所を警察に密告してしまう。

 

 

マニアックなイメージの強いゴダールだけど、その中でも最も知名度が高い作品よ。

理由としては、テーマが恋であることと、パトリシアのビジュアルがキュートでおしゃれなことかしら。

 

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女性らしさと潔さの絶妙なバランスのファッションが個性的でとってもオシャレ!

パリの街並みを颯爽と歩く姿が素敵よ。

 

ヌーベルバーグの特徴とも言える街中でのゲリラ撮影で、当時のリアルなパリの風景が見られるのも貴重。たくさんのクラシックカーが並んだ街を私も歩いてみたかった!

 

 

恋に暴力に逃走劇と、結構いろいろなことが起こるにも関わらず、全編にひっそりとした退屈さのある不思議な作品だったわ。

 

冒頭、カメラ目線のミシェルから飛びだす謎のパンチライン

「海が嫌いなら、山が嫌いなら、街が嫌いなら、勝手にしやがれ!」

 

わかるようなわからないような言葉だけど、これが結局すべてを説明しているのかもしれないような気もする。

 

パトリシアが最も望む、自由を得るとセットでついてくる退屈。そしてその退屈を手放すために人は恋をしてまた不自由を得る。

 

自由に縛られるくらいなら、恋をしていたほうがまだまし。

ミシェルに乾杯!