霧矢あおいの日々シネマ

女優・霧矢あおいの映画ライフ

AKIRA

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大友克洋原作の漫画「AKIRA」の劇場版。

 

1982年、世界大戦で新型爆弾「AKIRA」が炸裂したことにより東京は崩壊し、新首都「ネオ東京」を東京湾上に再建した。

 

2019年、ネオ東京は2020年にオリンピックを控えるもの、財政難による政府への反発からクーデターやテロが相次ぐ殺伐とした都市になっていた。

 

そんな街で暮らす暴走族リーダー格の少年・金田は、仲間たちとクーデターのどさくさに紛れ、いつものように禁止区域である、旧都市街を疾走していたが、先の大戦の爆心地付近で白髪の少年に遭遇し、不思議な力を目の当たりにする。

 

勢いあまって少年と衝突しそうになった、仲間の鉄雄に少年は手を触れずに重傷を負わせ、消えていった。

 

不思議な力に触れたため、自らも超能力に目覚めかけた鉄雄は、ラボに入院させられ、能力を増強させるための薬物を投与され、やがて制御できないほどの凶暴な力を得る。

 

力を得てから、悪夢でアキラの声を聞くようになった鉄雄は、アキラに興味を示し、重要国家機密である「AKIRA」と夢に現れる少年・アキラの謎を暴こうとする。

 

 

2020年のオリンピックまでに絶対に見ておきたい映画の1位は間違いなくコレ!

 

厳密には2019年くらいまでには見ておきたい映画だから観るなら今よ。

 

原作者自らが監督・脚本を手掛けている稀有な作品。

私は劇場版を見てから漫画を読んだけど、ストーリーが少しずつ違っていて、どちらが先でも楽しめると思うわ。

 

世紀末モノだけに、暴力の描写が多いから苦手な人は気を付けて!

 

ここまで書くとわりとアクの強い作品だけど、アニメ映画のクオリティとしてはとにかく最高!

 

動画としての作りこみが別格すぎて、アニメであることを疑いたくなるレベル。しかもすべてセル画だというから驚きだわ。

 

まず見てもらいたいのが人物の口の動き。「あいうえお」の口の動きをセリフに合わせて描き分けてるから、本当に喋っているみたいに見える。

 

 

何百という人を俯瞰で描きエキストラのように動くシーンも圧巻。

 

製作費がアニメとしては脅威とと言える10億円だというのも納得。手描きということをとっても、おそらくもう作ることのできない贅沢なアニメ映画ね。

 

 

 

世界大戦に大量殺戮兵器と、規模の大きな作品に見えるけど、描かれるのは東京の一部だけ。

 

 にもかかわらず、首都が崩壊していると世界が終わるように見えるのは日本独特の感覚かもしれないわね。

 

邦画洋画問わず、世紀末モノで「一方ブルックリンは・・・」的な描き方はよく見られるもの。だけど、なぜか日本の映画だとリアリティや危機感を逆に損なうことが多いように思うのは、

 

もしかしたら、日本という国が、問題が起きると外部の情報が入って来づらくなるということを私たちは実はよく知っているからかもしれない。

 

 

問題が内部で泥沼化して行くのをただ見ているだけの絶望感。

 

震災後に見るとそういったことが、より鮮明にリアルに感じられて、当時の歯痒さを思い出してしまったり。

 

 

 

AKIRAはSF作品だけれど、現在進行形の日本の「ヤバさ」がてんこ盛り。

 

そして、そのヤバさが製作当時から脈々と受け継がれ、2020年の東京オリンピックまで現実のものになろうとしているのがなによりヤバイ。

 

今も東京オリンピックは問題だらけだし、オリンピックに向けてだんだん貧しくなっているところは世の中にたくさんある。

 

にもかかわらず、映画を観てから、以前よりオリンピックが楽しみな私もいるから不思議。

 

アキラの爆発は奇しくも美しい日の丸を描き、都市の再生を思わせるエンディングには憧憬を抱く。

 

 

「皆、ぶっ壊してくれるなら誰でも良かったんだ。」


作品を象徴するから有名なセリフね。

まさに破壊は私たち一人一人の内側から始まっていることを自覚するわ。