霧矢あおいの日々シネマ

女優・霧矢あおいの映画ライフ

ノルウェイの森

 

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ノルウェイの森 は村上春樹原作の同名小説をトラン・アン・ユン監督で映画化した作品。

 

1970年代の学生運動が盛んな時代の大学生である主人公・ワタナベは、高校時代に親友・キズキを亡くしてから心に漠然とした不安と空虚さを抱えながら生きている。

複数の女の子と夜を共にしても埋められない心。

しかし、キズキの恋人であった直子と再会し、同じ空虚さを抱えた者同士次第に惹かれあう。

 

 

80年代を代表する大ヒット青春小説が20年以上経ってからの映画化ということで、上映前から話題になっていたのを覚えているわ。

 

物語の舞台である70年代の風俗がキッチュにデフォルメされていて懐かしいながらも若者の目には新鮮で視覚的にかなり成功しているわね。

 

水原希子ちゃんの出世作なだけあって、お人形さんみたいな容姿に芯の強い演技がとっても魅力的。70年代のカラフルなファッションも似合っていて真似したくなる!

 

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「私がケーキが食べたいなあと言ったらあなたは走ってケーキを買ってきてくれるの。それで、息を切らして私にケーキを差し出すんだけど、私はもうケーキなんていらない!と言ったらあなたはじゃあ何が食べたい?何でも買ってくるよ。っていうのよ。それが愛なの。」

みたいなセリフも、水原希子ちゃんだからこそ許せる。喜んでケーキ買いに行っちゃう。

 

希子ちゃんが演じる緑とは対照的な、直子役・菊地凛子さんの闇を抱えた演技も見もの。

 

呼吸の仕方ひとつをとっても、病んでいる女性と接したことのある人なら絶対にそわそわしちゃう名演技よ。

 

 

他に特筆すべき点はカメラワークと劇中の音楽。

鳥の視点のように動き続けるカメラワークは絶妙な速度で心地良く、当時の良質な音楽の数々も随所でしっかりと聴けるのが魅力。2回目以降の流し見も楽しめたわ。

 

 

 

肝心の中身は、かなり頭を抱える内容よ。

綺麗な女優さんの口から次々に淫語が飛び出すし、ストーリーも割と軽薄。

劇中5回くらい登場するベッドシーン(ただしすべて未遂)がけっこうつらい。

オシャレ映画だと思ってると火傷するわよ!

 

 

細かな内容は映画だけではわからない部分があるから、原作は読んだ方がいいかも。

登場人物たちの生い立ちとかね。

 

 

一通り観終って、若干ワタナベ君への怒りがわいてきたわ。優柔不断というか、恋にしても、選び取ってるというよりは、消去法でたまたまそうなっただけじゃん!

 

自ら選んで行動を起こしたのも、精神的に追い詰められている直子に同棲を持ち掛けたときくらい。これも青い!青すぎるわ!

 

ワタナベ君が大人になるのは、もう少し先かなあ。と思わせるラスト。

 

 

だけど、青臭い!の一言で済ませられない引っかかりが残るのもこの映画。

 

「結局大人とは何か」という問いかけがこの映画にはあるように思うわ。

 

ワタナベは「大人になるよ」と言った。

まだそれを悲しみと、永遠に子供のままの親友と恋人の存在が妨げているのが映画のラスト。

 

ワタナベのように心に大きな喪失があるままでは大人になれないのであれば、忘却に成功した者だけが大人なわけだけど、小説版の冒頭は37歳になったワタナベは心の痛みを思い出すところから始まるわ。

 

先に逝った愛する人たちへの感傷を抱えてなおも生きていくかどうか。

 

映画では描かれていない未来だけど、ここが本当の大人への分岐点なんじゃないかしら。